ユーロ通貨への移行は欧州連合への第一歩だと長い間言われ続けたが、この危機によりそれはいよいよ確信へと変化してきた。これは財政の強制的統合、つまり政治的連合を意味している。
今まさに、この政治的連合は現実に起こりつつある。ユーロ通貨制度という古い形態は危機に陥り、欧州諸国はその主権の巨大な損失の付けを払う事となる。
国家主義者はこの状態を慨嘆するだろうが、実際のところ近年、欧州には国家主義者も沢山は存在せず、多くの国とその国民は自分たちをヨーロッパ人だとみなし、更なる統合にも抵抗を感じてはいないのが現実である。
これからの動向だが、欧州連合が、ユーロ加盟国の財政予算を管理するか、最低でも加盟する国々がこの予算を勝手に動かせないようにするだろう。
お金は権力であり、最終的に財政予算が消滅すると、政治的権力が中央政府に集結する。これで現在の危機の核心が明らかにされる。ユーロ問題は、実は政治問題だという事なのだ。何が起ころうとも、経済危機の波紋は、政治的必要性の二次的な問題なのである。
中央銀行とその政策金利設定は、自由市場を管理する要であり、経済的問題がこのような結論に達するのも驚くべき事ではない。
10年来の低金利政策の付けで先進国の負債は巨大化し、欧州の社会モデルは肥大化した。そして、欧州各国の支払い能力を超えた負債を支えようと、世界中が高金利となってしまった。欧州連合加盟国は、統一通貨を使用しているために、金利調整が出来ない。ユーロ通貨諸国は“造幣”する事は出来ないし、欧州中央銀行の憲章に縛られ、通貨を調整する事も出来ない。そしてそもそも、ドイツはそれを好ましくは思わないであろう。
巨額の負債を抱える国にとって、ドイツのような順調なユーロ通貨連合メンバーからの救援が必須となる。
ドイツは、自ら財政予算を管理する権利を所有し、浪費家の欧州が彼らを破滅に追い込まなければ、このような国の救済に応じるであろう。
英国としては、問題山積のこの状態を好ましく思っていない。ドイツ合衆国またはドイツ支配下の欧州連合という概念自体がまず嫌いである。真の理由は地政学的な軽蔑以外ないのだが、もちろんこれも政治的理由に溢れている。他の理由としては、英国経済の20パーセントから25パーセントを占める金融セクターを、欧州が獲得するべく必死になっている様を感じるからである。
英国の政治家やメディアはここ数年、金融業界をあざ笑っているのでとても皮肉な事である。しかし、虐待配偶者のように、今、英国政府は裕福な妻を失うのを恐れている。欧州がロンドンから金融業界を奪い去り、失力した英国を半自治区として残しながら、全てをフランクフルトとパリに移し、ユーロを基軸とした欧州がその基礎の代表となり統合するという見解が怖いのだ。
投資家にとって疑問は山積する。果たしてこの政治的プロセスで欧州金融危機を救済出来るのか?またどう対応して投資すべきなのか?
今までの混乱の結果ははっきりと不況下のインフレ、「スタグフレーション」として現れる。欧州の殆どの国はGDPにおける政府歳出負担を軽減する金融緊縮案で、経済のバランスを取り戻そうとするであろう。最初は実体経済で容易に受け入れられない為、長期に渡り復興の兆しは見えてこないだろう。
間違いなくインフレが経済活動を高まる根拠となるが、山積した負債を消す為に、ドイツが欧州にインフレへの意義ある取組みをさせるかどうかは分からない。
インフレの度合いに応じて復興の長さが決定される。5パーセントから7パーセントのインフレ率だと5年の緊縮で改善され、2パーセントから3パーセントだと10年かそれ以上時間がかかる。
とりあえず、ユーロ通貨諸国が正式に政策に署名するか、国民投票を行うまで結論は出ないであろう。実際政策が可決されても、方向性によっては、破られるまでの政策となる。殆どの欧州各国に取り、10年もの経済停滞に耐えるのは非常に困難だ。という事で、この政策もそう長くは続くまい。
重要な経済指標はインフレ率で、それが上昇し始めると、投資家も真の復興の到来を確信出来るであろう。もしそうならなければ、欧州はユーロ高のまま日本のような経済の空白の時代に突入し、推測される限りの間、瀕死の経済状態が続く事となる。
欧州のソブリン債の利回りは上げ下げを繰り返し、政治家が合意するユーロ通貨諸国への資金供給を市場が拒否すれば、ユーロ通貨は壊滅し、欧州は1990年代に回帰するであろう。市場がスペイン、イタリア、ポルトガルそれぞれに、利回り5パーセント前後で資金提供する事に合意すれば、欧州合衆国時代の到来となる。
